「ごあいさつ」神戸保護観察所 統括保護観察官 左近司 彩子

神戸保護観察所で統括保護観察官をしております、左近司と申します。

阪神ダルクの濱津代表及びスタッフの皆様が、薬物依存をはじめとするアディクションを抱えた人たちの支援のため、日夜御苦労されていることにつき、深い感銘を受けております。

保護観察所は、犯罪をした人や非行をした人の再犯・再非行を防ぎ、社会の中でその立ち直りを支え、地域の犯罪を防止することを目標とした、法務省の機関です。

保護観察所でも、アディクションの問題を抱えた人たちは多く目にします。覚醒剤や大麻などで逮捕された人だけではなく、飲酒運転をする人やアルコールや処方薬の影響下で問題行動を繰り返す人、市販薬を手に入れたくて窃盗をする人、ギャンブルで生活困窮し犯罪に至る人、自分でも理由が分からずに万引きを反復する人など、背後にはアディクションの問題があると考えられる人たちが増えています。御存知のとおり、アディクションの治療には長い時間がかかりますが、残念なことに保護観察の期間は法律で定められており、我々が指導として関われる期間はごく限られています。私は、保護観察所で薬物再乱用防止プログラムを担当してきましたが、保護観察が終わる直前の最後のプログラムに参加していた人が、「ここに来ている間は欲求の話もできていたけれど、これが終わったらどこで話をしたらいいんだろう」と寂しそうに話す姿を見ると、心苦しく思います。

少し話は変わりますが、平成28年12月に施行した「再犯等の防止に関する法律」を踏まえ、平成29年12月に「再犯防止推進計画」が策定されました。この「再犯防止推進計画」では、犯罪をした人を「生きづらさを抱えた人」「支援が必要な人」と捉え、国や地方公共団体・民間が力を合わせて再犯防止に取り組むことが提唱されています。令和5年度から開始した第二次計画では、7つの重点課題の1つとして、「保健医療・福祉サービスの利用の促進」が掲げられていますが、そこには「薬物依存の問題を抱える者への支援」が含まれており、具体的な施策として、「自助グループ等の民間団体との連携を強化し、刑事司法手続が終了した後も継続的な支援ができる体制を整備」することが明記されています。

また、昨年12月には、更生保護法の一部が改正されましたが、そこでは、保護観察が終了した者等への地域での援助が保護観察所の業務として規定されることになりました。依存症の問題を抱えた人たちを地域で支えるダルクとの関係が、これまで以上に重要なものとなってくると考えられますので、今後ともよろしくお願いいたします。

更に、阪神ダルクが位置する兵庫県尼崎市においては、重層的支援推進事業の枠組みの中で、罪を犯した人を含む、複合的な問題を抱える人を多機関ネットワークの中で支えていく取り組みが進められています。そして、神戸保護観察所も、尼崎市・尼崎市保護司会と「再犯防止の推進に関する連携協定」を結び、ネットワークの一員として、彼らの生き直しを支えていきたいと考えています。

なお、私事ではございますが、令和6年4月以降は神戸保護観察所尼崎駐在官事務所の統括保護観察官として、尼崎市に住む保護観察対象者の処遇、及び市内の関係機関との連携を担当することになりました。阪神ダルクの皆様とは、顔を合わせる機会も増えるかと思います。これまで以上に協力関係を深めていきたいと思いますので、重ねてよろしくお願い申し上げます。

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